マンション管理業者は、管理組合から預かった修繕積立金などを、自己の固有財産および他の管理組合の財産と分別して管理しなければなりません(適正化法76条)。 具体的な方法は施行規則87条が定めています。2026年4月施行の改正で、管理業者が管理者を兼ねる場合の規律が追加されました。

まず3つの口座を区別する

口座 役割 名義人
収納口座 区分所有者等から徴収した金銭を預入し、一時的に預貯金として管理する 制限なし(管理業者名義でもよい
保管口座 修繕積立金を預入し、または収納口座からの残額を移し換えて管理する 管理組合等を名義人とする
収納・保管口座 徴収した修繕積立金等金銭を預入し、そのまま管理する 管理組合等を名義人とする

名義の違いが最初の出題ポイントです。 「保管」の字が付く2つの口座は管理組合等の名義でなければならず、収納口座だけが業者名義でもよい——ここを押さえます。

3方式の流れ

方式 修繕積立金 管理費等(1項の財産) 移し換え
イ方式 収納口座に預入 収納口座に預入 毎月、その月分から当該月中の管理事務に要した費用を控除した残額を、翌月末日までに保管口座へ
ロ方式 保管口座に直接預入 収納口座に預入 管理費等の残額を、翌月末日までに保管口座へ
ハ方式 収納・保管口座に預入 収納・保管口座に預入 移し換えなし
  • イ方式=いったん全部を収納口座に集め、使った分を引いて保管口座へ移す
  • ロ方式=修繕積立金だけ最初から保管口座に入れる(**ロは「Reserve(修繕積立金)を先に分ける」**と覚えると混同しません)
  • ハ方式=口座がひとつ。移し換えが起きない

覚え方のコツ

  • 移し換えの期限は翌月末日。「翌月20日」「翌々月末日」は誤り
  • 移すのは残額。その月分の徴収額から、当該月中の管理事務に要した費用を控除する
  • ハ方式だけ移し換えがないので、期限の話が出たらハ方式ではない

保証契約が必要なのはどの方式か

イ方式・ロ方式で修繕積立金等金銭を管理する場合は、 区分所有者等から徴収される1か月分の合計額以上の額について、有効な保証契約を締結していなければなりません(規則87条3項)。

**ハ方式には保証契約の義務がありません。**収納口座を経由せず、管理組合名義の口座にそのまま入るからです。

イ・ロ方式でも、次の両方を満たせば保証契約は不要です。

  1. 区分所有者等から管理組合等を名義人とする収納口座に直接預入される場合、または管理業者(もしくはその委託を受けた者)が徴収しない場合
  2. 管理業者が、その収納口座に係る印鑑等(印鑑・キャッシュカード等)を保管しない場合

「業者がお金に手を触れられない形になっているか」で判断する、と理解しておくと迷いません。

印鑑等の保管の禁止と、2026年4月改正の例外

管理業者は、保管口座または収納・保管口座の印鑑等を保管してはなりません(規則87条4項本文)。 預金通帳と印鑑の両方を業者が握れば、横領を止める仕組みがなくなるからです。例外は次の2つです。

例外 内容
従来からある例外 管理組合に管理者等が置かれていない場合に、管理者等が選任されるまでの比較的短い期間に限って保管する場合
2026年4月改正で新設 管理業者が当該管理組合の管理者等であるときに、次の5要件をすべて満たす場合

新設された例外の5要件(規則87条4項二号イ〜ホ)は次のとおりです。

  1. その業者または密接な関係を有する者以外に、印鑑等の保管を承諾する者がいないこと
  2. 不正利用・滅失・盗難・紛失等のおそれがないと認められる適切な保管体制を整備していること
  3. 口座に保管されている金額以上の額について有効な保証契約を締結していること
  4. 口座は、管理組合に帰属することが一見して明らかな者を名義人とすること
  5. 1〜4を満たすことを区分所有者等に説明し、書面を交付した上で、その業者が印鑑等を保管する旨の決議が集会でなされたこと

管理業者管理者方式では、印鑑を預ける相手(管理者)が業者自身になってしまいます。 そこで、「ほかに預かる人がいない」ことを前提に、保証と総会決議で縛るという設計になりました。 5要件は「ほかにいない・体制・保証・名義・総会決議」の順で覚えると思い出しやすくなります。

毎月の収支状況の書面(規則87条5項)

管理業者は毎月、委託を受けた管理組合のその月の会計の収入及び支出の状況に関する書面を作成し、 翌月末日までに管理者等に交付しなければなりません。

ただし、管理者等が置かれていないとき、または管理業者自身が管理者等であるときは、 交付に代えて、対象月が属する事業年度の終了の日から2か月を経過する日までの間、 事務所ごとに備え置き、区分所有者等の求めに応じて業務時間内に閲覧させます。

「業者自身が管理者等であるとき」が2026年4月改正で加わった部分です。 自分に自分で書面を渡して終わり、という抜け道をふさいだ改正だと理解してください。

有価証券の分別管理

修繕積立金等が有価証券である場合は、金融機関または証券会社に対し、

  • その有価証券の保管場所を、自己の固有財産および他の管理組合の財産である有価証券の保管場所と明確に区分させ
  • その有価証券がどの管理組合のものか判別できる状態で管理させる

方法によります(規則87条2項二号)。業者が自分で保管するのではなく、金融機関等に管理させるのがポイントです。

まとめ

論点 答え
収納口座の名義 管理業者名義でもよい
保管口座・収納・保管口座の名義 管理組合等
移し換えの期限 翌月末日(ハ方式は移し換えなし)
保証契約 イ・ロで必要。ハは不要。イ・ロでも直接預入かつ印鑑不保管なら不要
保管口座等の印鑑等 原則保管禁止。管理者未選任の短期間と、業者が管理者等で5要件を満たす場合が例外
毎月の収支書面 翌月末日までに管理者等へ交付。管理者等がいない/業者が管理者等なら備置き・閲覧

数字は「1か月分の保証・翌月末日・2か月を経過する日」の3つだけ。 あとは「業者がお金と印鑑にどこまで触れられるか」という視点で条文を読むと、細部まで筋が通って見えてきます。