会計分野は毎年数問しか出ませんが、型を覚えれば確実に取れる数少ない分野です。 簿記の知識がなくても、押さえるのは3つだけ。発生主義・借方貸方のルール・4つの経過勘定です。

大前提は「発生主義」

管理組合の会計は発生主義で処理します。 お金が動いた日ではなく、収入・費用が発生した日が属する会計年度に計上する考え方です。

場面 現金主義なら 発生主義(正しい処理)
3月分の管理費が3月に未入金 計上しない 3月の収入として計上(相手科目は未収金)
4月分の管理費を3月に受領 3月の収入 3月は収入にしない(前受金という負債)
3月に工事が完了し、支払は4月 計上しない 3月の費用として計上(相手科目は未払金)
4月からの保険料を3月に支払い 3月の費用 3月は費用にしない(前払金という資産)

「いつ払ったか」ではなく「いつのものか」。これが会計問題の合言葉です。

借方・貸方の決め方

仕訳は必ず左(借方)と右(貸方)に同額を書きます。どちらに置くかは次の表で決まります。

区分 増えたら 減ったら
資産(現金預金・未収金・前払金・什器備品) 借方(左) 貸方(右)
負債(未払金・前受金・借入金) 貸方(右) 借方(左)
収入(管理費収入・修繕積立金収入・使用料収入) 貸方(右) 借方(左)
支出(委託業務費・修繕費・水道光熱費) 借方(左) 貸方(右)

覚え方のコツ

  • 現金が増えたら左、減ったら右。まずこれだけを確実に置き、残りを反対側に書く
  • 収入は必ず右、費用は必ず左。逆向きの選択肢は読まずに切れる
  • 未収金は資産(左スタート)、前受金は負債(右スタート)。名前が似ていて逆に覚えやすいので要注意

4つの経過勘定の使い分け

勘定 区分 いつ使うか
未収金 資産 収入は発生したが、まだ受け取っていない
前受金 負債 まだ収入は発生していないのに、先に受け取った
未払金 負債 費用は発生したが、まだ支払っていない
前払金 資産 まだ費用は発生していないのに、先に支払った

」が付くのはあとで動くお金、「」が付くのは先に動いたお金。 そして受け取る側(未収金・前払金)は資産、渡す義務がある側(前受金・未払金)は負債です。

解く手順

  1. 問題文の会計年度の末日に線を引く。「3月31日で締める」のか「翌月末」なのかを確定する
  2. 取引ごとに、**いつのものか(発生)いつ動いたか(現金)**を分ける
  3. ずれている取引だけ、経過勘定を立てる
  4. 現金預金の増減を先に書き、残りを反対側に置く
  5. 選択肢を金額ではなく科目の位置で消していく

例題で確かめる

会計年度が4月1日から翌年3月31日までのA管理組合で、3月に次の取引があった。 ① 3月分の管理費90万円のうち、85万円が入金され、5万円が未入金だった。 ② 4月分の管理費として、3戸分3万円が3月中に入金された。 ③ 3月中に完了した共用廊下の補修工事代金40万円を、4月に支払うこととした。

①の仕訳

借方 貸方
普通預金 850,000
未収金 50,000
管理費収入 900,000

3月分は全額が3月の収入です。受け取れていない5万円は未収金という資産に置き換えます。

②の仕訳

借方 貸方
普通預金 30,000 前受金 30,000

4月分なので、今年度の収入にはしません。**前受金(負債)**として翌年度に繰り越します。

③の仕訳

借方 貸方
修繕費 400,000 未払金 400,000

工事が3月に完了しているので、3月の費用です。支払が4月でも当年度に計上します。

翌年度に入金や支払が実際に行われたときは、普通預金/未収金未払金/普通預金と、 経過勘定を消す仕訳だけを切ります。ここで収入や費用を二重に計上しないのがポイントです。

標準管理規約の会計ルール

仕訳と並んで問われるのが、標準管理規約の手続です。

事項 内容 条文
収支予算案 理事長が通常総会に提出して承認を得る。変更は臨時総会 58条1項・2項
予算成立前の支出 経常的でやむを得ない経費などは、理事会の承認で支出でき、予算成立後は予算による支出とみなす 58条3項・4項
収支決算案 監事の会計監査を経て、通常総会に報告して承認を得る 59条
管理費の余剰 翌年度の管理費に充当する 61条1項
不足が出たとき 共用部分の共有持分に応じた負担割合で、その都度負担を求められる 61条2項
修繕積立金 管理費とは区分して経理する。取り崩せるのは特別の管理に要する経費に充てる場合に限る 28条1項・4項
使用料 駐車場使用料などは、その管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる 29条
納入した管理費等 返還請求も分割請求もできない 60条7項

通常総会は毎年1回、新会計年度開始以後2か月以内に招集します(42条3項)。 「予算は事前に総会、決算は監事の監査を経て総会」というセットで覚えましょう。

税務のひとこと

管理組合法人は、法人税法の適用については公益法人等とみなされ、 消費税法の適用については同法別表第三に掲げる法人とみなされます(区分所有法47条13項・14項)。 法人格のない管理組合も、税務上は「人格のない社団等」として、 収益事業を行う場合に限って法人税が課されるという同じ結論になります。 組合員から集める管理費は収益事業の対価ではないため課税されませんが、 組合員以外への駐車場の貸付けなどは収益事業に当たり得る、という形で問われます。