長期修繕計画と修繕積立金は、建物・設備分野のなかでも数字を覚えるだけで取れるおいしい論点です。 根拠は国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインとマンションの修繕積立金に関するガイドライン (いずれも平成20年・平成23年策定、令和6年6月改定)です。
長期修繕計画に必ず入る5つの要素
ガイドラインは、長期修繕計画に次の5つを含めることを求めています。
- 計画期間
- 推定修繕工事項目
- 修繕周期
- 推定修繕工事費
- 収支計画
長期修繕計画は、将来の工事の内容・時期・費用を確定するものではありません。 「一定期間ごとに見直していくことを前提とした見込み」である、という位置づけをまず押さえてください。
覚えるべき数字
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計画期間 | 30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上 |
| 見直しの周期 | 5年程度ごとに調査・診断を行い、その結果に基づいて見直す |
| 見直しに要する期間 | おおむね1〜2年。見直しそのものも計画的に行う |
| 修繕積立金の額 | 長期修繕計画の見直しと併せて見直す |
| 収支計画 | 推定修繕工事費の累計額を、修繕積立金の累計額が下回らないように計画する |
覚え方のコツ
- **「30年・2回・5年」**の3つだけ。計画期間30年以上、大規模修繕2回以上、見直し5年程度ごと
- 「30年」と「2回」はかつの関係。30年あっても2回入っていなければ足りない
- 見直しのきっかけは、劣化状況・生活様式の変化・新工法の開発・物価や金利の変動など不確定な事項
手続の流れ
既存マンションの場合、理事会や専門委員会で検討したうえで専門家に依頼して見直し、総会で決議します。 総会の前には説明会等を開催して区分所有者に内容を説明することが必要とされています。 決議後は、総会議事録と併せて長期修繕計画を配付するなど十分に周知します。
標準管理規約でも、長期修繕計画の作成又は変更は総会の決議事項です(48条五号)。 理事長は長期修繕計画書・設計図書・修繕等の履歴情報を保管し、 組合員または利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは閲覧させなければなりません(64条2項)。
修繕積立金の額の目安
修繕積立金ガイドラインは、実際に作成された長期修繕計画366事例を分析し、 専有面積1㎡当たりの月額で目安を示しています(機械式駐車場分を除く)。
| 地上階数/建築延床面積 | 事例の3分の2が包含される幅 | 平均値 |
|---|---|---|
| 20階未満・5,000㎡未満 | 235〜430円/㎡・月 | 335円 |
| 20階未満・5,000㎡以上〜10,000㎡未満 | 170〜320円/㎡・月 | 252円 |
| 20階未満・10,000㎡以上〜20,000㎡未満 | 200〜330円/㎡・月 | 271円 |
| 20階未満・20,000㎡以上 | 190〜325円/㎡・月 | 255円 |
| 20階以上 | 240〜410円/㎡・月 | 338円 |
- 規模が小さいほど㎡単価は高い(1戸あたりの負担が重い)
- 20階以上のタワーマンションは最も高い
- 機械式駐車場がある場合は、修繕費がかさむため特殊要因として別に加算する
目安の計算式は次のとおりです。
Z =(A+B+C)÷ X ÷ Y A:計画期間当初の修繕積立金残高/B:計画期間全体で集める修繕積立金の総額/ C:専用使用料等からの繰入額の総額/X:総専有床面積(㎡)/Y:計画期間(月数)
なお、ガイドラインは「目安の範囲に収まっていないからといって、直ちに不適切だと判断されるわけではない」と 明記しています。断定的な選択肢には注意してください。
積立方式は「均等」が望ましい
| 方式 | 内容 | 評価 |
|---|---|---|
| 均等積立方式 | 計画期間中、同じ額を積み立てる | 将来にわたって安定的な積立てを確保する観点から望ましい |
| 段階増額積立方式 | 当初の額を抑え、段階的に値上げする | 増額時に合意形成ができず不足する事例がある。早期に引上げを完了させることが望ましい |
令和6年6月の改定で、段階増額積立方式を採る場合の引上げの考え方が示されました。
均等積立方式とした場合の月あたりの金額を基準額(D)とし、 計画の初期額(E)は基準額の0.6倍以上、計画の最終額(F)は基準額の1.1倍以内とする。 (0.6×D ≦ E かつ 1.1×D ≧ F)
**「0.6倍以上・1.1倍以内」**はそのまま問われる数字です。 ただし、工事費高騰などを踏まえた見直しで大幅に引き上げること自体を制限するものではない、という留保も付いています。
このほか、購入時にまとまった額を集める修繕積立基金や、修繕時の一時金、金融機関からの借入れを 前提とした方式もありますが、いずれも将来の負担増を前提とする点に留意が必要とされています。
修繕積立金の会計上の取扱い
ガイドラインは、管理規約に次の内容を定めることを求めています。
- 管理費と修繕積立金の区分経理
- 修繕積立金の使途の範囲(標準管理規約28条に定める事項に要する経費に充当する場合に限る)
- 専用使用料・駐車場使用料は、その管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる
- 管理費と修繕積立金の納入義務・分割請求の禁止
加えて、長期修繕計画と修繕積立金の額を5年程度ごとに見直す規定を置くことも望まれるとされています。
設計図書等の保管
管理組合は、分譲会社から交付された設計図書・数量計算書のほか、 計画修繕工事の設計図書、点検報告書などの修繕等の履歴情報を整理し、 区分所有者等の求めがあれば閲覧できる状態で保管することが必要です。 紛失・損傷を防ぐため、電子ファイルによる保管が望まれるとされています。
数字は「30年・2回・5年・0.6倍・1.1倍」。 あとは「長期修繕計画は確定ではなく見込み」「均等積立が望ましい」という方向性を押さえれば、 この分野は安定して得点できます。