2026年(令和8年)4月1日、改正区分所有法が施行されました。 昭和58年以来の大改正で、決議のしかたそのものが変わっています。 令和8年度の管理業務主任者試験は「令和8年4月1日現在で施行されている法令」から出題されるので、 この改正は避けて通れない最重要テーマです。旧法の知識のままだと、決議要件の問題はほぼ全滅します。

改正の柱は4つ

何が変わったか
決議の合理化 特別決議が「定足数+出席者の多数決」方式になった
所在等不明区分所有者 裁判所の決定で決議の母数から除けるようになった
管理不全・所有者不明 裁判所が管理人を選任する制度が新設された
再生の選択肢 建替え以外に4つの決議が新設され、建替え決議の要件も緩和された

1. 決議要件が「出席者の多数決」に変わった

改正前の特別決議は、区分所有者全員を母数とする「各4分の3以上」でした。 無関心な人や連絡が取れない人がいるだけで、反対と同じ扱いになり、決議が成立しませんでした。

改正後は、一定の出席がある集会で、出席者の多数決で決める方式になりました。

区分 改正後(2026年4月〜) 改正前
共用部分の重大変更(17条1項) 区分所有者の過半数かつ議決権の過半数が出席し、出席者及び議決権の各4分の3以上 区分所有者及び議決権の各4分の3以上
規約の設定・変更・廃止(31条1項) 同上 同上
管理組合法人の成立(47条1項) 同上 同上
使用禁止・競売・引渡し請求(58〜60条) 同上 同上
大規模滅失の復旧(61条5項) 上記の定足数+出席者及び議決権の各3分の2以上 区分所有者及び議決権の各4分の3以上

普通決議(39条1項)も「出席した区分所有者及びその議決権の各過半数」と明記されました。 書面・代理人・電磁的方法で議決権を行使した人は、出席者の数と議決権に算入されます(39条2項・3項)。

覚え方のコツ

  • 改正後の特別決議は「入口は全員基準、中身は出席者基準」。定足数は「区分所有者の過半数かつ議決権の過半数」、可決は「出席者の各4分の3」
  • 大規模滅失の復旧だけが3分の2。旧法の4分の3は誤り
  • 共用部分の変更でも、瑕疵の除去バリアフリー化に必要なものは「4分の3」が「3分の2」に読み替えられる(17条5項)

2. 所在等不明区分所有者を母数から外せる

区分所有者が誰か分からない、または所在が分からないとき、裁判所は、他の区分所有者または管理者の請求により、 その者を除いた区分所有者だけで集会の決議ができる旨の裁判をすることができます(38条の2第1項)。 この裁判を受けた者は、集会の議決権を有しません(同条2項)。

議決権を持たない者は、招集通知の相手からも、定足数・多数決の母数からも外れます。 条文に繰り返し出てくる「区分所有者(議決権を有しないものを除く)」がこれです。

3. 管理不全・所有者不明の管理命令

裁判所が管理人を選任して管理させる制度が、4種類まとめて新設されました。

命令 対象 条文
所有者不明専有部分管理命令 区分所有者を知ることができない専有部分 46条の2
管理不全専有部分管理命令 管理が不適当で他人の権利を侵害するおそれがある専有部分 46条の8
管理不全共用部分管理命令 同じ状態の共用部分 46条の13
(準用) 団地・被災区分所有建物 87条・88条ほか

いずれも利害関係人の請求で、裁判所が命じます。管理組合が勝手に選任できるわけではありません。 都道府県知事等も、適正な管理のため特に必要があるときは請求できます(適正化法5条の2の2)。

押さえどころは権限の差です。所有者不明専有部分管理人は、その専有部分の管理・処分の権利が専属します(46条の3第1項)。 これに対し管理不全専有部分管理人は権限を持つだけで所有者から権利を奪わず、しかも集会で議決権を行使できません(46条の9第2項)。 所有者不明のほうは、標準管理規約でも組合員とみなされ、議決権を行使できる扱いになっています。

4. 国内管理人

国内に住所も居所も持たない(持たなくなる)区分所有者は、国内に住所または居所を有する者のうちから管理人を選任できます(6条の2第1項)。 これが国内管理人です。海外在住オーナーの増加に対応した規定で、**義務ではなく「できる」**規定である点に注意してください。

国内管理人の権限は5つです(同条2項)。

  1. 保存行為
  2. 専有部分の性質を変えない範囲での利用・改良行為
  3. 集会の招集通知の受領
  4. 集会における議決権の行使
  5. 共用部分等に関する債務の弁済

選任したときは、管理者または管理組合法人に遅滞なく通知しなければなりません(同条3項)。 区分所有者との関係は委任に関する規定に従います(同条4項)。

5. 再生の選択肢が「建替え」だけではなくなった

建替え決議(62条)に加えて、次の4つが新設されました。いずれも原則5分の4以上です。

決議 内容 条文
建物更新決議 取り壊さずに構造上主要な部分を大改修する 64条の5
建物敷地売却決議 建物と敷地をそのまま売る 64条の6
建物取壊し敷地売却決議 取り壊して敷地を売る 64条の7
取壊し決議 取り壊すだけ 64条の8

さらに、建物が耐震性不足・耐火性不足・外壁の剝落のおそれ・配管の著しい劣化・バリアフリー基準不適合の いずれかに当たる場合、5分の4が4分の3に緩和されます(62条2項各号)。基準は法務大臣が定め、国土交通大臣と協議します。

なお、マンション建替え円滑化法は、同じ2026年4月1日に **「マンションの再生等の円滑化に関する法律」**に改称されました。条文を引くときの法令名にも注意してください。

試験対策としてのまとめ

改正点は「数字が変わったところ」と「新しい登場人物」に分けて覚えるのが効率的です。 数字なら大規模滅失の3分の2と建替えの4分の3緩和、登場人物なら国内管理人と4種類の管理人。 誤りの選択肢には旧法の数値がそのまま使われることが多いので、旧法を「誤答パターン」として覚えておくと武器になります。