区分所有法で毎年必ず出るのが決議要件です。 2026年4月施行の改正で、特別決議は「定足数を満たした集会での、出席者の多数決」に変わりました。 母数が全区分所有者から出席者に移ったので、覚え直しが必要です。この記事で一覧にして片づけましょう。

まず定足数の型を覚える

改正後の特別決議は、すべて同じ入口を通ります。

集会において、区分所有者の過半数の者であって議決権の過半数を有するものが出席し、 出席した区分所有者及びその議決権の各○○以上の多数による決議

入口(定足数)は全員基準で「過半数かつ過半数」、出口(可決)は出席者基準で「4分の3」または「3分の2」。 この2段構えが改正後の形です。書面・電磁的方法・代理人による議決権行使は、出席者の数と議決権に算入されます(39条2項・3項)。

決議要件の一覧

区分 主な事項 条文
決議不要(各人が単独でできる) 共用部分の保存行為 18条1項ただし書
普通決議
出席した区分所有者及び議決権の各過半数
共用部分の管理(軽微変更を含む)、共用部分の損害保険契約、管理者の選任・解任、小規模滅失の復旧、共同利益背反行為の停止請求訴訟の提起、管理組合法人の理事・監事の選任 39条1項、18条、25条1項、61条3項、57条2項
3分の2決議
定足数+出席者及び議決権の各3分の2以上
大規模滅失(建物の価格の2分の1超)の復旧/共用部分の変更のうち瑕疵の除去に必要なもの・バリアフリー化に必要なもの 61条5項、17条5項
4分の3決議
定足数+出席者及び議決権の各4分の3以上
共用部分の重大変更、規約の設定・変更・廃止、管理組合法人の成立・解散、使用禁止請求・競売請求・占有者への引渡し請求の訴えの提起 17条1項、31条1項、47条1項、55条2項、58〜60条
5分の4決議
区分所有者及び議決権の各5分の4以上(定足数の型ではない)
建替え、建物更新、取壊し/建物敷地売却・建物取壊し敷地売却(この2つは敷地利用権の持分の価格も5分の4以上) 62条1項、64条の5〜64条の8
全員の承諾・合意 書面または電磁的方法による決議 45条

覚え方のコツ

  • 3分の2はレアな2つだけ。「大規模滅失の復旧」と「瑕疵除去・バリアフリーの共用部分変更」。それ以外の特別決議は4分の3
  • 改正前、大規模滅失の復旧は4分の3でした。旧法の数値が誤りの選択肢によく使われます
  • 5分の4決議だけは「出席者の多数決」ではなく、全区分所有者を母数とするままです
  • 売却がからむ決議は、敷地利用権の持分の価格も数える(区分所有者・議決権・持分価格の3つで5分の4)

規約で変えられるところ・変えられないところ

事項 規約で加重できるか 規約で緩和できるか
普通決議の要件 ○(39条1項「別段の定め」)
特別決議の定足数 ○(過半数を上回る割合を定められる) ×
共用部分の重大変更の「4分の3」 × ○(2分の1超の範囲で引き下げ可)(17条1項)
規約の設定・変更・廃止の「4分の3」 × ×
建替え決議の「5分の4」 × ×

共用部分の重大変更だけ、可決割合そのものを規約で下げられるのが特徴です。 改正前は「区分所有者の定数だけを過半数まで減らせる」という規定でしたが、改正後は 2分の1を超える割合であれば規約で引き下げられる形に変わりました。

建替えの5分の4は「4分の3」に下がることがある

建物が次のいずれかに当たると認められる場合、5分の4が4分の3に緩和されます(62条2項)。 基準は法務大臣が国土交通大臣と協議して定めます。

  1. 地震に対する安全性の基準に適合していない
  2. 火災に対する安全性の基準に適合していない
  3. 外壁・外装材などが剝離・落下して周辺に危害を生ずるおそれがある
  4. 給排水その他の配管設備が著しい劣化で衛生上有害となるおそれがある
  5. バリアフリーの基準(建築物移動等円滑化基準に準ずるもの)に適合していない

この緩和は、建物更新決議・建物敷地売却決議・建物取壊し敷地売却決議・取壊し決議にも準用されます。

招集の手続と期間

場面 期間 条文
通常の招集通知 会日の1週間前まで(規約で伸長可) 35条1項
建替え決議等を目的とする集会 会日の2か月前まで(規約で伸長可) 62条6項
建替え決議等の説明会 会日の1か月前まで 62条8項
区分所有者による招集請求 5分の1以上の者かつ議決権の5分の1以上(規約で減可) 34条3項
請求後に通知が発せられない場合 2週間以内に、請求日から4週間以内の日を会日とする通知が出ないとき、請求者が招集できる 34条4項

管理者は少なくとも毎年1回集会を招集しなければなりません(34条2項)。 また、集会ではあらかじめ通知した事項についてのみ決議できます(37条1項)。 この制限は、特別の定数が定められている事項を除いて規約で別段の定めができます(同条2項)。

「議決権を有しないもの」の意味

改正後の条文には「区分所有者(議決権を有しないものを除く)」という括弧書きが繰り返し出てきます。 これは主として、38条の2の裁判で所在等不明区分所有者とされた者を指します。 裁判所の裁判を受けると議決権を失い、定足数の母数からも、多数決の母数からも外れます。 連絡が取れない区分所有者のせいで決議ができない、という問題への対応です。

団地の決議(参考)

決議 要件 条文
建替え承認決議 議決権の過半数を有する団地建物所有者が出席し、出席者の議決権の4分の3以上(緩和事由があれば3分の2) 69条1項・8項
一括建替え決議 団地建物所有者及び議決権の各5分の4以上(緩和事由があれば4分の3)。ただし、いずれか1棟でも、区分所有者の3分の1超または議決権の3分の1超が反対したときは不可 70条1項・2項

一括建替え決議の各棟要件は、改正前の「各棟で3分の2以上の賛成が必要」から、 改正後は「3分の1超の反対がないこと」という否定形に変わりました。 形式は似ていますが、棄権者の扱いが変わる重要な改正です。

数字は表で覚え、迷ったら「これは全員基準か、出席者基準か」を最初に判断する。 この順序を身につけておけば、決議要件の問題は確実に取れる分野になります。