マンション標準管理委託契約書は、国土交通省が示すモデル契約書です。 管理組合と管理業者が合意した内容を、適正化法73条の「契約成立時の書面」として交付する場合の指針という位置づけです。
2026年4月施行の改正適正化法で管理業者管理者方式が規律されたことに合わせ、標準管理委託契約書は令和7年12月に改正されました。 同時に、マンション標準管理者事務委託契約書が新しく策定され、 標準管理規約についても「管理業者管理者方式を採用する場合の書き換え表」が示されています。
管理事務は4つの業務でできている
| 業務 | 中身 |
|---|---|
| 事務管理業務(別表第1) | 基幹事務+理事長・理事会支援業務、総会支援業務、各種点検・立会い、管理規約の原本保管など |
| 管理員業務(別表第2) | 受付、点検、立会い、報告連絡 |
| 清掃業務(別表第3) | 日常清掃、定期清掃 |
| 建物・設備等管理業務(別表第4) | 建物点検、給排水・昇降機・消防用設備等の保守 |
事務管理業務には、適正化法2条6号の基幹事務(会計の収入及び支出の調定、出納、 専有部分を除くマンションの維持・修繕に関する企画または実施の調整)が含まれます。
再委託の制限(4条)
管理事務の一部または全部を第三者に再委託できますが、 事務管理業務については一括して再委託できません。適正化法74条が基幹事務の一括再委託を禁じているためです。 再委託しても、再委託した管理事務の適正な処理について管理組合に責任を負うのは管理業者です。
- 事務管理業務 → 一部のみ再委託可
- 管理員業務・清掃業務・建物設備等管理業務 → 全部または一部を再委託可
覚え方のコツ
- 「一括で投げられないのは事務管理業務だけ」
- 再委託しても責任は移らない。「再委託先が責任を負う」という選択肢は誤り
期間にかかわる数字は「3月前」で揃う
| 場面 | 期限 | 条 |
|---|---|---|
| 解約の申入れ | 相手方に対し、少なくとも3月前に書面で | 21条 |
| 更新の申出 | 有効期間が満了する日の3月前までに、書面で | 23条 |
更新の申出が3月前までとされているのは、更新前に重要事項説明を済ませる必要があるからです(適正化法72条)。 解約の申入れが3月前なのは、引継ぎに通常必要な期間を見込んだものです。 更新の協議が整う見込みがないときは、従前と同一の条件で暫定契約を締結できます。
なお、義務の履行を怠ったときは相当の期間を定めて催告したうえで解除でき(20条1項)、 管理業者が銀行取引停止、法的倒産手続の申立て、解散、マンション管理業の登録取消しなどに至ったときは、 催告なしで解除できます(同条2項)。
報告と免責
管理業者は、事業年度終了後○月以内に管理事務の処理状況と会計収支の結果を記載した書面を交付し、 管理業務主任者をして報告させます(10条1項)。これは適正化法77条に基づく報告です。 あわせて、毎月末日までに前月の会計の収支状況に関する書面を交付します(同条2項)。
緊急時の業務(9条)では、地震・台風・火災・漏水・爆発・孤立死などの事由で、 承認を受ける時間的な余裕がないものは承認を受けずに実施でき、 実施後に速やかに書面で内容と費用を通知します。やむを得ず支出した費用は管理組合が支払いますが、 管理業者の責めによる事故等の場合は除かれます。
免責事項(19条)は、災害・事故等による損害のほか、 善管注意義務を果たしたにもかかわらず生じた異常や故障による損害、 書面で注意喚起したのに管理組合が承認しなかった事項に起因する損害などです。 いずれも善管注意義務を果たしていることが前提で、果たしていなければ免責されません。
令和7年12月改正の6つのポイント
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 管理者事務との重複の整理(3条・別表第1) | 理事会がない管理業者管理者方式では、理事長・理事会支援業務を削除するなど、管理者受託契約との重複が生じないよう整理する |
| 部門と担当者の分別(8条) | 同一社内でも、管理者事務と管理事務の部門および担当者を分ける必要がある |
| 定期の説明会による報告(10条) | 管理業者管理者方式では、適正化法77条2項により説明会を開催して組合員等に主任者が報告する |
| 管理規約等の提供費用(15条) | 提供・開示費用は、マンション管理業協会のガイドラインが定める手数料の算式を参考にする |
| 契約行為の相手方(20条・21条・25条ほか) | 管理業者が管理者を兼ねる場合、利益相反事項について管理者は代表権を持たないため、相手方は監事。監事が未選任なら総会で選任・指名された者 |
| 利益相反取引の制限(26条) | 役務の提供を伴わない紹介手数料・仲介料・謝礼等を、総会の承認を経ずに管理組合以外の者から授受してはならない |
工事発注の透明化も加わりました。理事会方式であっても、 管理業者自身またはその関連会社が工事を受注する場合や、施工会社の選定業務のみを行う場合には、 工事費用の内訳や積算根拠を管理組合に説明することが望ましいとされています。 管理業者管理者方式では、さらに相見積りを取った場合はその内容、取らなかった場合はその理由の説明が求められます。
なお、8条の管理事務の指示は、カスタマーハラスメントを防ぐ観点から、 管理組合側は管理者等または指定する役員が、管理業者側が指定した者に対して行うものとされています。 ただし、組合員等が使用人等に対して行う情報の伝達・相談・要望を妨げるものではありません。
新設された標準管理者事務委託契約書
管理業者が管理者事務を受託するときの契約書として、令和7年12月に新たに策定されました。主な内容は次のとおりです。
| 条 | 内容 |
|---|---|
| 3条 | 管理規約・使用細則等・総会決議により定められた業務について管理者事務を遂行する |
| 5条 | 管理者事務担当者と管理事務担当者は、別の部門に所属する者が務める体制を整備する |
| 6条 | 原則として、管理組合の保管口座・収納・保管口座の印鑑等を預からない。施行規則の5要件をすべて満たす場合に限り保管できる |
| 10条 | 管理者事務の報酬は、管理事務の報酬と混在しないよう別個の契約で定める |
| 11条 | 事業年度終了後、組合員に処理状況を記載した書面を交付し、総会において報告する |
| 21条・23条・24条 | 途中解除・更新・終了は予定日の3月前までに書面で通知し、終了時は円滑な移行に必要な支援を行う |
| 26条 | 自己取引・利益相反のおそれがある取引は、重要な事実を開示して管理組合の総会の承認を得る。役務の提供を伴わない紹介手数料等の授受を禁止 |
標準管理規約の「書き換え表」
管理業者管理者方式を採る管理組合向けに、標準管理規約の書き換え表も示されました。
- 管理者は総会で選任する。任期は総会ごとの1年限り(再任可)
- 総会で後任が選任されなかったとき、管理者が辞任したときは、規約で定める期間または後任が選任されるまで職務を継続する
- 監事は、区分所有者と外部専門家(マンション管理士等)から各1名を総会で選任する
- 保管口座等の印鑑等は監事または総会で選任された者が保管する
- 災害等の緊急時には、管理者が共用部分等の保存行為を実施できる
管理者を業者が務める以上、チェック役は監事と総会に置く——この一点で全体が貫かれています。 条文を個別に覚えるより、「誰が業者を監視するのか」という視点で読むと、改正の全体像がつながります。